翔田寛著『探偵工女』読了

翔田寛著『探偵工女』(2014年、講談社)
「労働新聞」で紹介されていて気になっていたのですが、ようやく読む時間がとれました。
明治時代に富岡製糸場で密室での怪死事件が起きたという設定による歴史ミステリです。
富岡製糸場が作られた当時の背景、具体的な製糸工程、工場施設の細部、そして工女の労働環境などの話題がたくさん盛り込まれていて、なかなか興味深い。
不満だったところは、説明的なセリフが多かったり、真相やその解明に都合よく偶然が重なりすぎているところかな。
それでも、全体的には面白く読めました。
事件はフィクションですが、登場人物は実在の人物です。工場長である尾高惇忠の娘で、小説中では探偵役である勇が、富岡製糸場の最初の工女であったというのも史実だそうです。尾高惇忠の子孫には社会学者の尾高邦雄、作曲家の尾高尚忠、指揮者の尾高忠明、労働経済学者の尾高煌之助などがいます(Wikipedia情報)。
尾高煌之助先生といえば、経済学雑誌の編集者時代、何度も原稿をお願いしました。専門の数量経済史の研究でご多忙な中、いつも快くお引き受けいただいたことを憶えています。