最低賃金の私法的効力

最低賃金の発効日が近づいてきました。今年の全国平均は時間あたり1177円で、前年度の1121円から56円引き上げられることになります。これは過去2番目に大きい引き上げ幅です。

全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました

強行法規である最低賃金法への違反には、罰則があります。地域別最低賃金の場合は使用者に50万円以下の罰金、特定最低賃金の場合は30万円以下の罰金が科されます。

罰則と契約は別?

ところで、次のように言う社長がいたら、どう思いますか?

「もちろん最初は最低賃金に不足しないように給与額を決めたさ。でも、最低賃金がこう毎年ガンガン上がるんじゃ、うちみたいな零細企業はとても追いつかないよ。もともと給与額は契約で決めたものだろう? 約束した額はちゃんと払っているんだからいいじゃないか。社員に文句は言わせない。罰則が怖くて経営ができるか!」

…いやいや、僕の知る限りこんなことを言う社長さんはいませんが、話の都合上、こう言う人がいたとして。

この発言、「最低賃金違反には行政罰があるけれど、だからいってもともと約束していた給与額を超えて最低賃金の額を支払う私法上の義務が生じるわけじゃない」ということを言っているわけです。
行政罰の対象となったとしても、契約で約束した額(ここでは最低賃金未満の給与額)そのものの有効性には変わりがない、という主張ですね。

約束していなくてもしたことになる

もちろん、この主張は誤りです。強行法規である最低賃金法に違反した契約は無効になります。
しかしそれだけではありません。最低賃金法第4条第2項では、次のように定められています。

最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。(太字は筆者)

つまり、労働契約のうち最低賃金に満たない賃金額の部分は、自動的に最低賃金に置き換えられます。契約書に書かなくても、それが契約の内容になる。これを「強行的効力」あるいは「直律的効力」といいます。

こうした定めは労働基準法にもあります(第13条)。

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

公法であると同時に、私法上の効果もある、ということです。

最低賃金の話に戻ると、定められた最低賃金と支払われた賃金額に差がある場合、労働者が債権を主張する根拠にもなります。支払いが遅くなれば、その差額に加えて遅延損害金も支払うことになりかねません。

といっても、最低賃金額は時給額で決まっているので、月給額に換算したりするのが難しいですよね。最低賃金の計算に入れていい手当と入れてはいけない手当の区別もあるので、さらにややこしいです。
最低賃金を割っているのに気づかないまま何か月も過ぎてしまう、ということは、実はよくある話ですのでご注意を。
どのように計算したらよいのかよくわからないときは、ぜひ社労士にご相談ください。

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