最低賃金の対象から除外される手当

先日の投稿で書いた通り、給与額が最低賃金をクリアしているかどうかをみる際に、算入できる手当とできない手当があります。
例えば、次の手当は最低賃金の対象から除外されます。
・家族手当
・皆勤手当
・通勤手当
参照:厚労省「最低賃金の対象となる賃金」
もっとも、手当の名称で形式的に決まるものではなく、その支給実態で決まります。例えば「家族手当」が扶養人数に関わらず全労働者に一律定額で支払われていたりする場合は、最低賃金をみる賃金単価の計算に入れることができます。
割増賃金から除外される手当との違い
ところで、最低賃金を判定するときの賃金単価は、給与計算ソフトで表示される残業代の単価のことだと思われる方も多いのではないでしょうか。
じつは「残業代(割増賃金)の計算基礎となる賃金・手当」と、「最低賃金の計算基礎となる賃金・手当」は少し異なります。
割増賃金の計算基基礎となる賃金からは、下記の手当は除外してよいことになっています(これも、名称でなく実態でみます)。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
「別居手当」とは単身赴任手当などのことですね。
「子女教育手当」というのは、従業員の子どもの教育費を補助するための手当のことで、特に在外公館に勤務する公務員には、その子どもの教育にかかる費用を補助する手当があり、外務省令でこの名称が使われています。「子女」とは「息子と娘」の意味ですね。
参考:子女教育手当の支給に関する規則(昭和48年外務省令第6号)
趣旨としては、労働の対価という性格が薄いため、割増賃金の基礎から外されるわけです。
割増賃金の趣旨と最低賃金の趣旨
みてわかる通り、割増賃金の基礎に算入しない手当と、最低賃金を満たしているかを判定するための計算に入れない手当のうち、重複しているのは家族手当と通勤手当です*。
一方、住宅手当は割増賃金の基礎には入れないのに、最低賃金を判定する際の計算には入れられます。この違いはなぜでしょうか?
理由は、法律の目的が違うからです。
割増賃金を定めている労働基準法(第37条)は、割増賃金の基礎となる賃金を労働との直接関連性が強い分と考えます。一方、最低賃金法は第1条で「労働者の生活の安定と労働力の質的向上を図り…」とその目的を宣言しており、その目的のために最低限保障されるべき賃金として最低賃金を考えています。
この「労働との直接関連性」と「労働者の生活の安定」という違いが、算入されるべき手当の違いに反映されているといえます。
住宅手当は、労働の対価ではないが労働者の生活の安定のために必要な手当として認められるということですね。一方、皆勤手当は最低賃金の計算には入れません。皆勤しなければ出ない手当は、労働者の生活の安定という観点からは最低賃金に含めるべきでないからです。
*本記事では、月例給に含まれる手当について比較しています。ほかに、「臨時に支払われる賃金」、「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)」などが割増賃金あるいは最低賃金の対象から除外されますが、ここでは説明を割愛します。
実務上は限定列挙
もっとも、このように法律上の趣旨を理解したとしても、会社で実際に支給されている様々な手当の中には、目的をスパッと割り切れないものも出てくるんですよね。(社長に聞いても、目的が判然としなかったり、複数の目的が混在していたり…。)
なので、実際に算入できるかどうかは法律による限定列挙の形で定められています。実務上はこの限定列挙に従うべしということになります。
先に述べた通り、手当の性格は必ずしも名称でわかるとは限りません。その支給趣旨に基づいて、限定列挙された「除外する手当」に含まれるかどうかを判定する必要があります。もしその判定に迷うことがありましたら、お近くの社労士にご相談ください。
