AIと労務相談

「AIで労務相談」という広告をネットでよく見かけるようになりました。
昔、「コンピューターによって代替される仕事は定型業務、単純な業務が多いので、人間はもっとクリエイティブな仕事に集中できるようになる」といった感じのことが言われていた気がします。
でも違いますよね。例えばAIは高品質の動画や画像をすでに生み出しています。
じつは真にクリエイティブな仕事というのはごくごくほんの一握りで、ほとんどの「クリエイティブ」な仕事の実態は、上手に「模倣」してそれを適切に組み合わせることなんですよね。模倣や組み合わせはAIの得意技。だから、今後はどんどん「クリエイティブ」な仕事がAIに代替されていくのではないでしょうか。人間の役割は、AIをうまく使いこなすことに重点が置かれていくのだろうと思います。
社労士も「今後は3号業務に力を入れていかないと」などと言われてきました。手続き・届出などの1号・2号業務はアプリや電子申請でどんどん簡単になっていくから、相談業務である3号業務が社労士の稼げる仕事の中心になる、ということです。
でも、みんな相談業務に関する情報をインターネットで発信していますから、AIがそれを上手にまとめてくれば、社労士の代替になってしまう。むしろ、手続きや届け出は無資格者ができないという意味で守られていますが、相談業務はそうでないから、AIに対して非常に分が悪いといえます。
もっとも、現状に限って言うなら、まだそこまでは来ていないかもしれません。
先日、お客様が「法律では〇〇となっていますけど、どうしたらいいでしょう」という質問をメールで送ってこられました。その「〇〇」が変なんですよ。そんな法の規定は聞いたことがない。調べてみると、GoogleのAIが作成した答えそのままなんです。AIが作成したその答えは、どうもある特定のサイトでライターが書いた記事をもとにしているようなんですが、その記事が間違っている。言葉通り法律を受け止めて正確に書こうとしているんだけど、悲しいかな、法学の基礎知識が不足しているので解釈が間違っている。
そして、AIにはその真偽が判定できなかった。お客さんはそれを信じてしまったわけです。
この程度ならまだAIは敵じゃないな、と思いました(笑)。
でも、まあ時間の問題かもしれません。それも、たぶんそんなに先の話じゃないという気がしています。