休日出勤に「法定外労働」はあるか

以前、お客様から「日曜に出勤して、8時間を超えて労働したらその分の賃金は6割増しになるのか」と聞かれたことがあります。

thinking office worker

この会社は、日曜が法定休日です。「6割」というのは、休日出勤の割増賃金3割5分(以上)と、法定時間外労働の割増賃金2割5分(以上)を足して算出した数字でした。

この場合、休日労働の割増賃金3割5分増しで法律はクリアします。休日労働は時間外労働ではないからです。法定休日について、労働時間が8時間以内なら法定時間内とか、超えたら法定時間外とか、そういうことを考える必要はありません。(もちろん、6割増しにしたからといって違反となるわけではありませんが。)

時間外労働(法定時間外労働)とは、法定休日以外の日について成り立つ考え方です。休日労働が通常の日本語の意味で「法定時間以外の労働」であることは間違いありませんが、法律用語としての「(法定)時間外労働」ではないということです。わかりにくいですね。

これは週当たりの労働時間についても言えます。法定労働時間は週40時間ですが、法定休日出勤(例えば日曜出勤)をしたぶん週40時間を超えたとしても、そのぶんは時間外労働にはなりません。単に休日労働です。

ただし、深夜に労働が及んだ場合は、法定外であるかないか、休日労働であるかないかに関わらず、2割5分増し(以上)です。なので休日労働かつ深夜労働なら、足し算して6割増し(以上)になります。

ここで注意が必要なのは、休日労働の「休日」とは、法定休日のことを指していることです。労基法上、法定休日は週1回定めれば足ります。

例えば週休二日制の事業所が日曜を法定休日、土曜を法定休日でない休日とした場合、土曜の勤務は休日労働でなく時間外労働になりえます。もし月曜から金曜まで8時間ずつ働いていた場合、それで合計40時間になりますから、法定休日でない土曜の休日に出勤すれば最初から時間外労働(2割5分増し以上)になります。

一方、この土曜に8時間を超えて働いても、賃金の割増率をさらに増やす法的な必要はないということになります。すでに法定時間を超えているからです。


ただし、月の法定外労働時間が60時間を超えた場合、60時間を超えた分は割増率が5割以上必要です。この規定は中小企業への適用が猶予されていましたが、働き方改革関連法案により2023年3月いっぱいで猶予が終了となります。

時間外労働の多い事業所では、そのままでは人件費の大幅な上昇となります。まだ先の話とはいえ、残業時間の短縮に取り組むなら早めに着手しないと手遅れになる恐れもあります。業務の割り振り、各部署の人員の見直しなどと共に、繁忙期がある場合は変形労働制の導入で解決できることもあります。また、60時間超の割増率5割のうち2割5分は労使協定により代替休暇にすることもできます。

時間外労働・休日労働の削減についてお悩みの事業主様は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

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