令和4年度の雇用保険料率
今年度の雇用保険料率が厚労省から発表されました。
特徴的なのは、前半(9月30日まで)と後半(10月1日以降)で保険料率が異なることです。
雇用保険料率は平成29年以降、一般事業は本人負担が3/1000、事業主負担が6/1000でずっと推移してきました。5年ぶりの変更、しかも増額となったわけですが、背景には、繰り返し報道されている通り、新型コロナ感染症への対応として雇用調整助成金の支給が急増したことがあります。
料率が2段構えになったのは、激変緩和措置とされています(7月に参院選があるためという説もありますが…)。
保険料はどの程度増えるか
今回の増額は実際にはどのくらいになるでしょうか。例えば「一般の事業」で、給与が30万円の人を例にして考えてみましょう。
昨年度の雇用保険料率だと、本人負担は900円、事業主負担は1800円、総額で2700円です。
今年度の保険料率では、9月までは本人負担は900円のままですが、事業主負担は1950円となり、総額は2850円です。
10月以降は、本人負担が1500円、事業主負担が2550円となり、総額は4050円となります。昨年度に比べ、毎月1350円増えるということになります。
どうでしょうか。感想は人によりまちまちだと思いますが、毎月人数分発生する保険料ですから、会社単位で考えればかなりの支払い増という印象を僕は持ちました。
過去の保険料率
もっとも、雇用保険料率は過去にはもっと高かったこともあります。平成17年度と18年度には、一般の事業の本人負担が8/1000、会社負担が11.5/1000でした。
一般にはあまり知られていないことかもしれませんが、法律上の雇用保険料率は合計で15.5/1000とされています(一般の事業の場合。労働保険料徴収法第12条第4項)。しかしいわゆる弾力条項(労働保険徴収法第12条第5項)と、平成29年度から令和3年度までの失業等給付分を引き下げる措置の影響で、近年はかなり低い額に抑えられてきました。雇用保険の財政には余裕があったのです。
それが、新型コロナ感染症の蔓延により変わりました。雇用調整助成金はもともと雇用安定事業として雇用安定資金から支出されますが、その財源は枯渇しました。いまは臨時特例法*による一般会計からの雇用安定資金への資金投入と、雇用保険の積立金からの雇用安定資金への貸し出しにより凌いでいる状況です。
*「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」令和3年2月13日施行
特例はいつ終わる?
雇用調整助成金の新型コロナ特例は、現時点では今年度の6月までということになっています。しかしこれまで何度も延長となっていますから、本当に6月に終わるのかどうかはわかりません(実際、厚労省のホームページでも、7月以降の取扱いについては、「雇用情勢を見極めながら具体的な助成内容を検討の上、…5月末までに」発表するとされています)。
個人的には、期限を明示して「ここで必ず終了する」とアナウンスし、本当にその期限で終わらせることが必要な時期に来ているように思います。